
ペルソナ中心のUIデザイン

現場でデザインしていると、「何を作るか」が決まった状態で降りてくることがあります。ただ、そこにデザインの詳細な要件までは入っていません。
作る前に、一度こう考えてみてください。誰が、どんな場面でこれを使うのか。その人はそこで何に引っかかるのか。これをリリースして、結局なにが達成されるのか。 ここまで具体的に言えないまま作ると、画面はできても「なぜこれなのか」に答えられません。
このトレーニングで身につけるのは、そこを自分で埋める考え方です。 使う場面を具体的に想像し、その人が何に困っていて何が起きればゴールに近づくのかを決める。そこからUI体験を組み立てる。この流れが一通りできるようになります。
その出発点がこのセッションです。
この5つが揃えば、セッション2に進めます。
今回のお題「BookShelfの投稿体験の提案」で言うと、この回でつくるのは提案の前半2つです。
プロトタイプはまだ作りません。作るものを決める前に、誰の何を解くのかを決めます。ここが決まっていないと、あとで作ったものを「なぜこれなのか」と聞かれて答えられなくなります。
自分のお題で進める人へ
自分が作りたいものや、現場で担当しているプロジェクトでやってもかまいません。その場合も、このセッションで出すものは同じです。誰がどんな場面で使うのかと、そこで何に引っかかるのか。すでに仕様が決まっているプロジェクトなら、その仕様は一度脇に置いて、ユーザーの場面から考え直してみてください。そこが噛み合っていないことに気づく、というのもこのセッションの収穫です。
[図:デザイン要件に必要な「課題」と「配慮」を発見する]
やることは3段階です。
大事なのは、課題と配慮を頭から絞り出すものではないということです。1と2でユーザー像が具体的になっていれば、3は「見つける」作業になります。逆に、3で何も出てこないときは、たいてい2の具体度が足りていません。
実際の作業は5つです。
全部で1時間半〜2時間くらいを想定しています。2と3が図の「具体化」にあたります。ここが厚いほど4が楽になるので、時間をかけるならここです。
このセッションのアウトプットは、2つのことで質が決まります。先に言っておきます。
どちらも、押さえないまま進むと後のセッションで効いてきます。1つずつ見ていきます。
行動フローを書き終えたら、こう見てください。ユーザーを別の人に差し替えても、その文章がそのまま成立しないか。
成立するなら、まだ一般的な手順を書いています。
本を読む → 感想を書こうと思う → BookShelfを開く → 投稿する
これは誰でも成立します。人が見えていません。
ユーザーを具体的にすると、こうなります。
入社2年目。リモート中心で、他チームの人とはほぼ話さない。夜に技術書を少しずつ読んでいるが、読み終わらないまま次の本に手が伸びる。
章の途中で「これ面白いな」と思う → 誰かに言いたい気持ちが少し湧く → でも読み終わってないから投稿する資格がない気がする → そのまま閉じる
行動が同じでも、その裏で何を考えているかが入ると人が立ち上がります。よくあるマーケティングのペルソナと違うのはここです。年齢や職種を決めることではなく、行動の理由まで想像することが目的です。
これをやらないと、機能だけができあがって「これ誰が使うの?」になります。
判定する質問:この行動フロー、名前を別の人に変えても成り立ちますか?
課題を出すとき、一番やりがちなのが「面倒くさい」「操作しづらい」で止めてしまうことです。
「面倒くさい」は結論です。課題ではありません。その手前に必ず理由があります。だから、書いたものに「なぜ?」を2回足してください。
投稿するのが面倒くさい
↓ なぜ?
ちゃんとした感想を書かないといけない気がする
↓ なぜ?
同僚に読まれるから、浅いと思われたくない
ここまで来て、やっと課題です。3行目まで来ると、ボタンの位置や操作性では解けないことが分かります。「下書きっぽく見える見た目にする」「読み終わった直後に一言だけ書ける」みたいなアイデアは、ここから出てきます。
出した課題を見て、最後にこう聞いてください。
「これを直したら、この人は本当に投稿するか?」
ボタンが押しやすくなっても、書くことが思いつかなければ投稿しません。「うーん、しないかも」となったら、それはまだ表面の課題です。
ここまで読んで「けっこう考えることが多いな」と思ったら、その感覚は正しいです。画面を作る作業と違って、正解が先に決まっていません。最初は手が止まるのが普通です。
止まったら、止まったまま相談してください。「できてから聞く」必要はないです。むしろ、途中の中途半端なものを見せてもらったほうが的確に返せます。コミュニティにどうぞ。
セッションの最後に、自分の作ったものを点検するチェック項目があります。全部クリアしないと次に進めない、というものではありません。
では始めましょう。