身につけること
価値定義のフォーマットを使って方針を言語化できる
「理想の体験の流れ」をストーリーとして描ける
体験フローからUIアイデアをブレストできる
前回の「体験の棚卸し」ワークでは、ユーザーの感情から「UIで配慮すべきこと」をあぶり出し、サマリーシートを作成しました。
進め方の記事でお伝えした STEP2「理想の体験を定義する」 にあたるパートです。手元にあるそのシートの「配慮」を使って、ユーザーにとっての「理想の体験(なりたい状態)」を定義し、具体的なUIアイデアの種に変換していきましょう。
前回見つけた「配慮」を、UIアイデアに変換しよう
「配慮すべきこと」はわかった。でも、それをどうやって画面(UI)に落とし込めばいいのでしょうか?
いきなりFigmaを開いて画面を作り始めるのは、まだ早いです。 まずは、その配慮がすべて叶った「ユーザーが最高にハッピーな状態(理想の体験)」をストーリーとして描き、そこから逆算して「じゃあどんな機能や情報が必要か?」をブレストしていきます。
このステップで目指す「ゴール」
このワークを終えたとき、手元には以下の3つができあがります。
- 価値定義: この機能がどんな課題を解決し、ユーザーをどう理想の状態に近づけるのか?というブレない方針。
- 理想の体験の流れからアイデアを出す: ユーザーが「こういう風に体験できたら最高だ!」という具体的なストーリーを整理して、デザインのアイデアに繋げる

これがあれば、「なんとなく」ではなく、「ユーザーの理想の体験を実現するために必要なUI」を自信を持って作れるようになります。
テンプレート
実践する上で使うためのテンプレートは以下で全てが見れます。
FigjamやFigma Design、そのほかmiro、テキストなんでもお好きなもので展開してください。(おすすめはFigjam)
このフレームワークで整理して実践していきましょう💪
▼ 価値定義をする
価値定義シート
▼ 理想の体験を整理する
理想の体験を整理するフレームワーク
実践!理想の体験からアイデアを出す 3つのステップ
それでは、前回から引き続き「社内本レビューアプリ(BookShelf)」の田中さんを題材に、手を動かしていきましょう! 手元に前回のサマリーシートをご用意ください。
整理:「価値定義」を作成して方針をまとめる

□ やること 前回のシートで整理した「配慮すること」を使って、このユーザーに対して提供する体験が「どういう状態になるのがベストか(価値定義)」を文章にまとめます。
□ これをやるとどうなる?(デザインで効く理由) 「配慮」の箇条書きを、誰の・どんな障壁を・どんな体験なら超えられるかという一文の方針に束ねられます。「機能を増やしたい」「見た目を整えたい」だけの議論に流れにくく、あとで理想の流れやUIを決めるときにも「これは価値に効くか?」と戻れるコンパスになります。
□ ポイント
- 以下の決まったフォーマットの穴埋めをするだけでOKです!
- フォーマットに沿って書くと、欲求・障壁・打ち手が一度に整理され、抜け漏れを防ぎやすくなります。
□ 具体例(田中さんの価値定義)
【価値定義のフォーマット】
救いたいユーザー(入社したての田中さん)は、
「チームに貢献するため、上司が勧めた本からの学びをサクッと共有したい」という欲求があるが、
「内容がうろ覚えで、長文を書くのがプレッシャー」ということが障壁になってしまい、
「レビューの投稿」がやりづらい。
そのため、
「タイトル予測変換や、3行でOKという気軽さに配慮した体験」にすることで、
ユーザーのやりたい状態が達成しやすくなるので、この機能には価値がある!
この方針を軸に、次から実際に「理想の体験」を整理していきます。
Step 1. 「理想の体験の流れ」を作る

□ やること Step 1で作った価値定義をもとに、田中さんがこの機能を使うときの「理想の体験の流れ」を時系列のフローで書き出します。
□ これをやるとどうなる?(デザインで効く理由) 価値定義を、時間と文脈つきのストーリーに落とす作業です。フレーム1では感情を外した「機械的なフロー」を土台にしましたが、今回は逆に、気持ちよく進む理想の出来事を細かく見える化します。どの瞬間に何がうまくいっていると最高かが見えるので、次のステップで「このシーンに、どんな画面・情報・操作が必要か」が具体化しやすくなります。
□ ポイント
- 前回は感情を無視した「機械的なフロー」を書きましたが、今回は逆です!
- 「こういう状態になりながら進めていくと最高だ!」というユーザーのリアルな心の声(ストーリー)を交えて、体験の流れを細かく書いていきましょう。
- 細かく書くほど、あとから「ここは画面が切り替わる」などの区切りも見つけやすくなります。
□ 具体例(田中さんの理想の体験フロー)
- 流れ1:本を読み始める
- 「よし、今日は上司に勧められた『誰のためのデザイン?』を読むぞ!」 - 「せっかくだし、社内のBookShelfを開いておこっと」
- 流れ2:本を読む + 投稿を書く
- 「とりあえず『新規投稿』の場所だけ作っておくか(サクッとタイトル入力完了)」 - 「さ、読み進めるぞ〜」 - 「『シグニファイア』ってむずい言葉だな…あ、ヒントみたいなことね。なるほど、これ忘れないうちに投稿しとこ!(パチパチ)」 - 「良い概念モデルをデザインすることが大切…と。これも投稿しとこ!(パチパチ)」 - 「本の内容に加えて、自分の気づきもセットで短く書いておくと、後でチームの役に立ちそうだな〜」
のように”具体的なリアルな行動と心情”がわかるようにまとめましょう
Step 2. 「体験に必要な要素」を出す

□ やること
- 理想の体験に必要な”要素”を書き出します
- 思いつくだけ書き出しましょう
□ これをやるとどうなる?(デザインで効く理由)
- 理想の流れを実現するための「条件」を考えることができます
- 「条件」を達成することで、理想の体験に近づくため、アイデアを評価したり具体化するときにイメージしやすくなります。
Step 3. 理想の流れから「UIアイデア」を出す

□ やること
- Step 2で作った「理想の体験の流れ」をもとに、各フローで「その体験を実現するためには、どんなUI(情報や機能)が必要か?」のアイデアをブレストしていきます。
□ これをやるとどうなる?(デザインで効く理由)
- 理想の流れの成立条件から逆算するので、アイデアが「あったら便利」に寄りにくくなります。
- 体験が途切れそうな単位(画面の切り替わりなど)で区切ると、情報や機能の塊が見え、優先順位をつけやすくなります。
- あとでプロトタイプにするときの検証のまとまりにも直結します。
□ ポイント
- 全体を一気に考えると大変です。体験が途切れるフロー(画面の切り替わりなど)ごとに区切って、細かくアイデアを出していくのがコツです。
- ここで出したアイデアをもとに画面を作り、足りなさを見ながら整理する…というサイクルでブラッシュアップしていきます。
□ 具体例(UIに必要な体験要件のブレスト)
さきほどの「流れ2:本を読む + 投稿を書く」のフローを実現するためのアイデアを出してみましょう。
○「新規投稿」の作成部分
- ユーザーの声:「とりあえず場所だけ作っておくか」
- UIアイデア:
- 本の選択(検索)は最低限必要。最悪、トピックで説明できれば本を選ばなくてもいいパターンもあり得る? - 作成時に最低限必要な情報は? → 「タイトル」「ユーザー名」「日時」。 - 表紙の画像が自動で出るとテンション上がりそう。
○ 気づきなどの入力部分
- ユーザーの声:「忘れないうちに投稿しとこ!(パチパチ)」
- UIアイデア:
- 読みながら書くなら、長文のテキストエリアじゃなくて、Twitter(X)のように短いフォームで「連投」できる形式がいいかも! - サクサク投稿できる軽快なUIにしよう。 - 画像(本の図解など)もサクッと貼れると便利そう。 - 本の内容を引用できる機能があると最高だけど、技術的に難しそうなら一旦外すか。
最後に:アイデアは「プロトタイプ」で検証してサイクルを回そう
お疲れ様でした! ここまでで、ユーザーの「なりたい状態(理想の体験)」から逆算して、根拠のあるUIアイデアがたくさん出たはずです。
「要件を満たすだけの綺麗なUI」を作っていた頃とは、出てくるアイデアの質(ユーザーへの思いやり)が全く違うことに気づいたのではないでしょうか?
ただ、ここで出したアイデアはまだ「文字」でしかありません。 このアイデアが本当にユーザーの理想の体験を作れるかどうかは、実際にプロトタイプ(画面)を作ってみないとわかりません。
ここから先は、Figma等でプロトタイプを作り、「このUIでさっきのストーリーは実現できるか?」を評価しながら、さらにブラッシュアップ(デザインサイクル)を回していきましょう。
STEP3(プロトタイピング)の進め方そのものは、進め方の記事にも書いたとおり、この連載のフレーム1・2では深掘りしていません。
手を動かす手順は、BONOのデザインサイクル/プロトタイピングなどの別コンテンツで体系立てて学ぶ想定です。迷ったら、進め方の記事の「STEP3」節を読み返してください。
▼ 参考の進め方
UIが上手くなる人の“デザインサイクル” ─ 入門編β
デザインで迷走しなくなる「正しい進め方」を、実践しながら体で覚えるAI時代にも必須な入門レッスンです。
