業界動向

「AIがあれば、もうデザイナーはいらないんじゃないか」
そんな声を、この一年でよく耳にするようになりました。正直に言うと、僕自身はこの意見にまったく同意していません。むしろAIが登場したことで、デザイナーとしてより挑戦できる時代になったと感じています。
ただ、その理由をちゃんと言葉にしようとすると、意外と難しいことに気づきました。そもそもデザインとは何なのか。AIによって本当は何が奪われ、何が奪われていないのか。そしてこれからのデザイン人材には、何が求められるのか。
この記事では、まずデザインという行為そのものを定義し直すところから始めます。次に、AIツールの登場によって現場で実際に起きていることを整理します。そのうえで、これからのデザイン人材に求められる世界観と、ジュニアデザイナーが具体的に身につけるべきスキルの話へとつなげていきます。
正解のない問いですが、BONOを運営する1人の実践者として、今の時点での考えをまとめてみました。
1 : デザインとはそもそも何か 2 : AIの登場でデザインに起こっていること 3 : 必要なデザイン人材の世界観 4 : これからのデザイン人材に必要なスキル
UIデザイン、UIUXデザイン、プロダクトデザイン、呼び名はそれぞれありますが、Webサービス業界でデザインに関わってきた自分なりのデザインをAIの話をする前に定義していきたいと思います。
作ることだけがデザインじゃない
「デザイン=何かを作ること」と思われがちですが、僕はそう捉えていません。人と何かの間をつなぎ、いい感情を生み出し、人が自然といい方向へ進みたくなる。そんな状態をつくることが、僕にとってのデザインです。
僕自身はインターフェースのデザインからキャリアを始めたので、「UIの人」と言われることがあります。ただ、UIはスマートフォンやパソコンの画面だけを指すものではありません。「ユーザーインターフェース」を「人と何かの間に挟まるもの」と捉え直すと、あらゆるものに適応できる概念になります。
たとえば、今この記事を読んでいる端末がPCならキーボードもUIです。自分の意図を画面に打ち込み、表現するための間にあります。コップで何かを飲むときも同じで、取っ手や口をつける部分は、飲み物と人間の間を媒介するインターフェースだと考えています。
モノ以外にも当てはまります。あるサービスに対して人が持つ印象や、伝わってくるイメージもインターフェースの一種です。
たとえば「フジロック」というワードを聞いて何を思い浮かべるか。「よくわからないイベント」なのか、「浮かれた人たちが集まるミーハーな場」なのか。そのイメージをつくっているのは、周りの人から聞いた話だったり、広告だったり、SNSで見た「フジロック行ったよ」という写真だったりします。
これらすべてが、その人の印象とその後の行動を決めるという意味で、僕の中では体験の一部だと捉えています。
こう考えると、デザインとは知覚できる形を決めるだけの仕事ではありません。 その先にある人の感情や行動まで責任を持ち、設計することです。
もちろん、いつもそこまでできる仕事ばかりではありませんが、意識してデザインに向き合うことで、「どういう形であるべきか」と同じぐらい「誰のどういう状態に向けた体験か」を自然と設計することになります。
つまりデザインは、形を決める前に、まず目的を発見したり定義することから始まります。
「何が課題なのか」「何を伝えたいのか」「人は今どういう状態に置かれているのか」を踏まえて、「こういうアプローチがいいのではないか」を模索する。
そこから、必要な形や伝え方を"体験"として組み立てていく。目的と人の間にある体験・感情・行動を設計することがデザインだと考えています。
もちろん、いつでもそんな仕事ができるわけではありません。ですが、そうデザインを捉え、実践しようと僕自身は試みてきたつもりです。
すぐにアウトプットを考えることから、デザインが始まることはあまり多くありません。「これを作ってください」「この要件でお願いします」と言われることはありますが、誰が何のために、どんな目的でそれをやるのかを理解しなければ、形を決めることや判断することができないからです。
理解した瞬間に「これだ」と分かるような選択肢の少ないシンプルな依頼であれば楽ですが、課題解決やユーザーや事業のことを考えると必ずしもそうではありません。
こういう時には探究から始まります。この探究には二種類あります。
2026年現在、AIの文脈では「デザインの探索」についてあまり語られていない部分だと感じています。”どう生成するか”のアウトプット論の割合が多い。
ですが、デザインにとって"探索"はかなり重要な要素です。 僕が好きなLinearの共同創業者 \*\*Karri Saarinen (元Airbnbのデザイナー)\*\*も、「コードですぐアウトプットが作れるからデザインは不要なのでは」という声に対して、こんなブログを書いています。
私たちの業界では、デザインはいまだによく誤解されています。新しいツールは、インターフェースをより速く生成したり、言葉をすぐにプロダクトへ反映させたり、デザインをそのままコードへ落とし込もうとし続けています。
そこにある前提は明らかです。「デザインとは、アウトプット(成果物)をつくる行為である」ということです。
―Output isn't design - Karri Saarinen(Linear共同創業者) https://linear.app/now/output-isn-t-design
クリストファー・アレグザンダーは、このことを最も的確に言語化した一人です。彼は『形の合成に関するノート(Notes on the Synthesis of Form)』の中で、デザインを「フォーム(形)とコンテキスト(文脈)のよい適合を探すプロセス」として描いています。
ここでいうコンテキストとは、単なる背景条件ではありません。 その問題をその問題たらしめている、あらゆる力の総体です。
人間のニーズ、技術的な制約、衝突する要件、習慣、例外ケース、一見すると見落としてしまいそうな関係性──それらすべてを丁寧に時間をかけて見ていく必要があります。
こうした力学が解消されずに残っているところに、悪いデザインが現れます。逆に、それらの「ミスフィット」が丹念に解きほぐされていったところに、良いデザインが立ち現れます。
Output isn’t design - Karri Saarinen Co-founder of Linear https://linear.app/now/output-isn-t-design
逆に、こうした文脈を無視して「もうこの形でいいよね」を積み重ねてしまうと、誰になぜこれを届けるべきなのか?が薄れ、事業としても機能しなくなる可能性は高まります。
難しい状況があればあるほど、現状を整理し、重要な要素を発見して方向性を形作る探索のフェーズが必要です。
Saarinen氏はブログの中で、自身が学んだこととして次のように書いています。
その過程で僕が学んだのは、「与えられた問題を、そのまま前提として受け取らない」ということです。何かをデザインしてほしいと依頼されたとき、まず最初にやるのは「これは本当に解決すべき問題なのか?」と疑うこと。「もしこれをやらなかったら、どうなる?」「誰がこの問題を定義した?」といった問いから始めます。
―Design is more than code - Karri Saarinen(Linear共同創業者) https://linear.app/now/design-is-more-than-code
どれだけかっこいいグラフィックを作るにしても、どれだけ人の課題を解決するにしても、その先には必ず「届けるべき人」がいます。その人や文脈を考えたうえで初めて、「かっこいい」という感情や「使いやすい」という配慮が生まれます。
そのためには、一発で答えを出そうとしないことが重要です。 形の探索、参考事例の探索、ユーザーの探索。これらの探索量とその質が、最終的なアウトプットの質をそのまま決めると言っても過言ではありません。
パッと思いついた一案をそのまま形にするのと、何十もの可能性を検討したうえで一案にたどり着くのとでは、同じ見た目になったとしても、その裏にある説得力がまったく違います。
AIによってある程度コンテキストを再現できる時代になってきましたが、AIをうまく使うためにも、この探索を通じて得たコンテキストが土台になります。
つまりアウトプットの質を高めるための土台づくりこそが探索であり、それはデザインの基本として、これからも変わらず存在し続けると考えています。
探索を重ねた結果、最初のアイデアが一番良かった、ということもあります。それでも、検討の過程で生まれた没案が、その案の説得力を裏付けてくれることもあります。そしてリリースしたあとも、探索は続いていきます。
そこで学んだことを、次のアウトプットや体験づくりに応用していく。この終わらない探索と制作のループを繰り返すことで、アウトプットの質そのものが少しずつ高まっていきます。ここをAIと一緒にやっていくことこそ、これからの時代に求められるクリエイティブなのだと考えています。
では、AIが登場したことでUIデザイン、UIUXデザインの現場では実際に何が起きているのでしょうか。私が観測している範囲でトピックにしてお伝えします。
日本国内のXでよく話題になるのは、UI生成の自動化です。各社がデザインシステムというコンテキストをAIに渡すことで、デザイナー以外の人もUIプロトタイプ、あるいはリリースできるレベルのものまで作れるようになっている。そういう動きをよく見かけます。
これだけ見ると、「デザイナーはもういらないのでは」と感じる人もいるでしょう。ですが正直なところ、この仕組みで終わるデザイン作業は「もともとデザイナーの中でも誰がやっても同じようになる範囲の問題だった」というだけの話だと思っています。
たしかにAIの進化によって、デザインの専門知識がなくてもアウトプットを出せる領域はどんどん広がっていきます。事業運営をする組織にとってもその方がやりやすい部分も多いでしょう。
ただ、それが広がるのに比例して、アウトプットや体験そのものが「誰でも作れる当たり前のもの」になっていく部分も同時に広がっていきます。
一方で、様々な制約や条件を探索したうえで感情や体験を設計するようなデザインは、時代や人、ツールが変わるにつれて内容やレベルは変化しても、対象が「人」である以上なくなることはないと考えます。むしろ複雑化していく一方です。
こうしたデザインスキルは変わらず必要とされ続けます。ただし、繰り返しになりますが、ただアウトプットを生成するだけのデザインの価値は、AI以前から徐々に下がっていたものであり、その傾向はこれからも続いていくと考えています。
「デザイナーでなくても60点のアウトプットが出せる」という話は、デザインに限った話ではありません。コードを書くことも、資料を作ることも、ビジネスを理解することも、AIと協業することで、職種を問わず"入り口の作業"は誰でもこなせるようになってきています。
だからこそ価値を持つのが、「T型人材」という考え方です。一つの分野で深い専門性を持ちながら、他分野にもしなやかに染み出し、その掛け算で価値を出せる人材。そうしたケーパビリティを持つ人が活躍するイメージが、今広く語られるようになっていると感じています。
### プロダクトマネジメント・エンジニアリングへの染み出し
もちろん、他職種の領域への染み出しというのも、選択肢としてあるだろう。特にシニアなプロダクトデザイナーとプロダクトマネージャーの仕事の境界線というのは、元来曖昧なもので、むしろそちらへの染み出しが自然に感じられる人も多いだろう。
定量分析や情報の構造化といった、デザインキャリアで身につけづらかった「能力」はもはやAIの「Skill」となりつつあるので、踏み出しやすくもなっている。エンジニアリングも言わずもがなである。
一方でデザイナーがデザイン領域で「判断」し、「旗を立て」ているように、プロダクトマネージャーやエンジニアもそれぞれの分野で、似たようなことを行っている。「越境」とはそれぞれの分野の倫理やルールに踏み込むことでもあり、異邦人(時には招かれざる客)として郷に入っては郷に従うことが必要になってくる。他者の専門性へのリスペクトを持つことが何より重要だ。
UX・ビジネス・エンジニアリングの境界に立ち、バランスを取りながらスムーズに仕事を進められる人はこれまで稀有な存在であった。その数は確実に増えていくだろうなと思う。
Takejune 株式会社スマートバンク Co-Founder/CXO https://x.com/takejune/status/2071412054246957397
バイブコーディングの普及によって、一人でSaaSサービスを作り、売り上げを立てる。そんな事例を耳にするようになりました。
国内では特にエンジニアバックグラウンドの人たちが作っている印象が強いですが、個人でサービスをリリースする話がSNSでよく話題になるようになっています。
これ自体は、個人的にはとても良い流れだと思っています。もちろん、みんながサービスを作らなければいけないわけではありませんが、それくらい自分の専門領域外のことも、AIと共同作業することで実現できるようになった。これは一つの事実です。
この流れは、AIモデルが発達するほど、AI活用が型として定着していくほど、事例とともにどんどん広がっていくはずです。
「自分が今までやってきたことを奪われるのでは」という見方もあります。ですが僕は、それ以上に「自分がやりたいこと、実現したいことに対してできることがどんどん増えている」と捉えるほうが、ポジティブだと思います。
それに土台のあるスキルがどこかにある方がAIをしっかり使い倒せますし、土台のスキルがないと、AIに代替されます。
"ユーザー・ビジネスに対して価値をつくる"をゴールにした考え方が徐々に広まる1つの動きだと感じています。
国内・シリコンバレー双方の情報を追っていると、デザイナーがFigmaのデータで作業を終えるのではなく、実際にリリースできるレベルのデータまで作る。あるいはコードを使って、本番相当のデータを扱えるプロトタイプを提案する。そんな事例が当たり前のように増えてきました。
Figma自体も、デザイナーが扱える素材の一つとして"コード"を位置づけ、2026年のConfigで「コードレイヤー」という機能を発表しています。
AIによって扱えるものが増えた結果、これまで知識がなかった人でも、デジタル領域に身近なコードを扱えるようになってきています。それにともなって、価値の探索や、より精度の高いアウトプットが求められるようになってきていると感じます。
これまでは「デザインデータ」という、実装の一歩手前のデータだけを作って終わりというケースが多くありました。ですが僕は、それは本来ベストな状態ではなかったと捉えるべきだと思っています。
デジタル上で良い体験を作ると言いながら、実際にユーザーが触れる場面まで想像できない、触れられない”完成品"で止まっていたデザイナーも少なくなかったはずです。覚えることが増えて大変な流れではありますが、この変化は前向きに受け入れていくべきだと考えています。
デザイン人材として求められるスキルや在り方はこれまでの\*\*"分業時代"で築かれたものではなく、より本質的な価値を軸に、再構築\*\*されてきています。
AI時代に必要なデザイン人材のあり方を書いていってみたいと思います。
誰でもアウトプットを作れるようになり、自然言語からもアウトプットが生まれる時代になりました。
その結果、「どの方向性に進むべきか・それはなぜか・だからコレで行くべきだ」という責任を、デザインの専門家が持てるかどうかは、分かれ道だと考えます。
様々な人がデザインの領域に入り込めるようになったからこそ、逆に"デザイナー"という席そのものが与えられなくなる場面も増えていくと考えています。
そんな中で、デザインのスペシャリストとして大切なのは、しっかりと"デザイン観点で構築した”ビジョンを持ち、それを提示し、事業やチームの目的と合致させ、ポジティブな議論や提案をしていくことです。
これは戦略のような抽象論だけではありません。Webサービスであれば実際のUIの表現や体験、コミュニケーションといった具体も踏まえ、抽象と具体を行き来しながらビジョンを組織や事業に提案できることが求められます。
Config2026のCatt Smallさんのセッション (https://youtu.be/WGZ38oeoBtU?si=pDusUNYVXjcZo40t)では、AIを使う中で見えてきた弱い部分と、そこにデザインがまだ介入できる問題解決の視点について語られる場面がありました。

体験やユーザーの感情に責任を持つ人が必ずしも「デザイナー」と呼ばれるべきとは思いません。。組織や個人のスキルによるので、一概な定義は必要ないです。
ですが、「作るだけ」を求められる席がどんどん外されていく中で、デザインを志す人材としては、常にこのビジョンを提示する側であろうとすること。それが、これからより強く求められる資質になると考えています。

「UIを作る」ことは手段でしかありません。ユーザーのなりたい状態をデザインするために、「体験を作り」、「ユーザーの感情をポジティブに動かす」ことをゴールに置く。これを基本として、デザインを実行することが大切です。
課題解決につながるのも、この視点があってこそです。UIだけを見ると「使いやすい/使いづらい」という操作性だけに閉じてしまいがちですが、本来の使いやすさは、その人がどんな状況でなぜ使うのか?を考えているかで変化します。
また考える・Figmaで形にするだけではなくリリース後の結果にまで責任を持って事業やユーザーに貢献する責任も体験デザインには求められます。1人の責任ではないですが、職能の染み出しやデザイン基準を上げることを考えると、結果まで向き合ってデザインできることは当たり前に求められてくると考えます。
Xを見ていると「AIでUIやデザインの生成を誰でもできる仕組みを作り、調整すること」自体をデザイナーの仕事と捉える人も見かけます。
これは今まで書いてきたデザインの定義とは少しばかり違うと考えています。が、1つの職能の活躍場所として広がっています。
デザインシステムの構築のAI時代版のようなイメージです。 社内でのAIワークフローの設計や振る舞い方針を定め、誰でもデザイン生成を再現できるよう自動化を目指す仕事です。
国内では、ユビーさんが「踊り手/舞台装置」という言葉でこの構造を表現しています。
この3ヶ月ほど、社内で「AI時代の組織と人材の今後」を定義するプロジェクトを進めていて、その中で出てきたのが「踊り手と舞台装置」というキーワード。
―#15 デザインプロセスは死んだ?踊らにゃ損のAI組織論と、ホワイトカラー産業革命の話 / chihokotaro https://note.com/chihokotaro/n/n13e6e5ce8d3a
おそらく国内だとこの論調が分かりやすいし既に強く”デザイナーの仕事"として語られ始めているのですが、個人的に”これだけ”になるのはあまり好ましくないと思っています。
AIによって誰でも同じようなアウトプットを作れる時代だからこそ、サービス独自の「テイスト(世界観、がイメージしやすいかも)」を作れるかどうかが、重要なテーマとして挙げられていると感じています。
テイストとは、サービスや物体に宿るカルチャー的・思想的な概念のことです。見た目やグラフィックもその一部ですが、それは表面でしかありません。なぜそのアニメーションなのか、なぜそのメッセージなのか。サービスが信じる方向性や思想が色濃く反映されているほど、テイストは人に届きやすくなります。その思想は、方針や機能、UI、言葉遣いなど様々な場所に滲み出てきます。
機能などはそこまで変わらないけど、なぜこのサービスを使うのか?のメッセージを届け、共感され、ユーザーもサービスをつくる一員になるような、そんな”テイスト”を設計する重要性の高まりを感じます。
それでは最後に、個人としてどんなデザインが求められているのかをまとめます。BONOでは、この要素をトレーニングできる道具と場をつくっていくことを理想のゴールに進めていきます。
具体的には、次の6つを考えています。
スキルの話をすると、どうしても「How」の部分に注目が集まりがちです。 ですが、デザインを志して行きたいのであれば、デザインそのものとクリエイティビティを信じることが大切だと考えています。
この記事でも書いた通り、探索の対象は自分が置かれた状況によって変わります。ビジネスのことを考えなければいけない場面もあれば、ユーザーのことを考えなければいけない場面もある
ただ作るだけでなく、物事を吸収して、考えて、組み立てる力。それに掛け算して、人の感情や知覚に合ったものを生み出す力。AIでどれだけ模倣できても、できない部分は己のクリエイティビティが必要だと信じる価値観やビジョンは精神論ではなく重要です。なぜなら答えはないし変わっていくからです。
デザインのビジョンを広く、強く持つ、深めながら、自分の目の前のことから始めてみる。必要な1歩でだと考えています。
具体的には、「ユーザーのシナリオを描く」ことから始めるのがおすすめです。いきなりUIを考えるのではなく、まず「ユーザーがどんな行動を取ると目的が達成できるか」というシナリオを描き、それをUIで体験にする一連のデザインフローです。
こうすることで、制作したUIの良し悪しを自分でも判断でき、デザインの結果に向かう試行錯誤が始まります。
もう1つ欠かせないのがプロトタイピングです。一度作って終わりにせず、パターンを試し、方向性を詰めていく。この反復を回せるようになると、UIの操作性だけでなく、「その人がどんな状況で何を考えているか」まで踏まえた体験をデザインできるようになります。
AI活用は、もう避けて通れないものになっています。一度やったことや、誰がやっても同じ結果になる作業をどう仕組み化していくか。そうした「AIの使い方のリテラシー」を上げていく必要があります。
それに加えて、コードを扱ってウェブ上の体験を作るスキルにも、真剣に向き合う必要があります。技術を土台にする仕事である以上、その根幹にあるコードを扱えることは大きな意味を持ちます。しかも今は、AIによってコードがかなり簡単に扱えるようになっています。ここに苦手意識を持ったまま進むのは、正直、時代に合っていません。逆に言えば、コードを扱えることで、自分が考えた体験の価値を伝えたり、高めたり、仕組み化したりできるようになる。AIが出てきた今、手を出さない理由のほうが少ないと思っています。
体験を作るうえで、コードや技術という変数は避けて通れません。ビジネスやチームの目標と一緒に、技術的な要素も踏まえて議論しながら体験価値をデザインしていく。それが当たり前になってきています。
もちろん、すべてのコードを自分の手で書ける必要はありません。ですが、データベースの仕組みや画面が作られる仕組み、デザインシステムの管理の仕組みといった大枠だけでも、AIと一緒に一度サービスを自分で作ってみる。考えたものが実際にURLになり、他の人が使える状態にリリースする。
これは今の時代、かなり大きな武器になりますし、大切な当たり前の感覚になると考えています。
考えるだけでなく、実際に結果にさらされる経験をどれだけ積めているか。これが、顧客理解や事業感覚をリアルなものとして持ち続けられるかを左右します。
サービスをリリースするうえでは、ユーザーの課題が本当にどこにあるのかをインタビューなどで発見することが出発点になります。ですがそれだけでは足りません。
実際にユーザーが動いたという数値を、リリースやテスト利用を通じて計測しながらデザインを設計する。この経験の有無が、大きな差を生みます。
考えて形にしたものが、しっかりユーザーの行動に達したのか?を顧客理解と数値指標を使って、リアルに向き合い能力値を深めていく。AIでできることが増えたからこそ、結果と向き合うことを前提にしていくことが当たり前になるべきと考えます。
AIが生成したものを正しく評価するために、自分の手で作った「クラフト」の経験が欠かせません。
それだけでなく、ユーザーの感情に訴え、共感して動かすための表現や体験が誰でもそれらしいことが生成できる時代の差別化になります。
もちろん、誰かが作ったデザインシステムでAIに生成させるだけの役割なら、クラフトのスキルはそこまで必要ないかもしれません。ですが、細部にまで生きとどく「見る目」が人の感情を動かす体験の構築に繋がると考えています。
AIの時代でも、AIを使わず自分の目で参考を盗み、手で形にして鍛えられたスキルは確実に生きてくるでしょう。初心者もこれは避けては通れないことです
最後に、大事なソフトスキルとして探求心、自主性、提案力の3つを挙げて終わります。
AIによって「普通のこと」はどんどん自動化されていきます。そして興味のあることはすぐに調べることもできます。
つまり、探求心と自主性があればすぐに調べて実行に移してそこから深めていくことが容易になっているんです。成長スピードに大きな差が生まれる時代になっています。
だからこそ、前のめりに首を突っ込み、自分でどんどん試していく人ほど、その分だけぐんぐん力をつけていきます。逆に「やったほうがいいから」や「正解」が出揃ってからでしか動けないと実行からの経験値を獲得することが難しいです。
大事なのは、興味を深掘りすること。どんどん吸収してどんどん実行していくこと。より深掘りたいと思える分野について突っ走ることだと考えています。
あとは「やるかやらないか」「そこに時間とお金を使うか」という意思決定だけが、人によって差が生まれる部分になっています。
そしてその結果を誰かにシェアしたり、提案したりして、自分だけの世界を他人とつなげ、コラボレーションしていく力も欠かせません。一人ではいいものは作れないからこそ、伝える力、巻き込む力が今まで以上に必要になると考えています。
デザインとは何か、AIによって何が変わり、何が変わらないのか。ここまで書いてきたのは、その定点観測です。
デザインが人に対しての行為である以上なくなることはありません。むしろAIによって、その仕事はより多くの人に開かれ、同時により深い探索と判断力を求められるようになっていくでしょう。
BONOは、この前提に立って進んでいきます。デザインを「作ること」だけでなく「人を動かす体験をつくること」として捉え、実践できる場づくりを進めて行きます。
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業界動向

「AIがあれば、もうデザイナーはいらないんじゃないか」
そんな声を、この一年でよく耳にするようになりました。正直に言うと、僕自身はこの意見にまったく同意していません。むしろAIが登場したことで、デザイナーとしてより挑戦できる時代になったと感じています。
ただ、その理由をちゃんと言葉にしようとすると、意外と難しいことに気づきました。そもそもデザインとは何なのか。AIによって本当は何が奪われ、何が奪われていないのか。そしてこれからのデザイン人材には、何が求められるのか。
この記事では、まずデザインという行為そのものを定義し直すところから始めます。次に、AIツールの登場によって現場で実際に起きていることを整理します。そのうえで、これからのデザイン人材に求められる世界観と、ジュニアデザイナーが具体的に身につけるべきスキルの話へとつなげていきます。
正解のない問いですが、BONOを運営する1人の実践者として、今の時点での考えをまとめてみました。
1 : デザインとはそもそも何か 2 : AIの登場でデザインに起こっていること 3 : 必要なデザイン人材の世界観 4 : これからのデザイン人材に必要なスキル
UIデザイン、UIUXデザイン、プロダクトデザイン、呼び名はそれぞれありますが、Webサービス業界でデザインに関わってきた自分なりのデザインをAIの話をする前に定義していきたいと思います。
作ることだけがデザインじゃない
「デザイン=何かを作ること」と思われがちですが、僕はそう捉えていません。人と何かの間をつなぎ、いい感情を生み出し、人が自然といい方向へ進みたくなる。そんな状態をつくることが、僕にとってのデザインです。
僕自身はインターフェースのデザインからキャリアを始めたので、「UIの人」と言われることがあります。ただ、UIはスマートフォンやパソコンの画面だけを指すものではありません。「ユーザーインターフェース」を「人と何かの間に挟まるもの」と捉え直すと、あらゆるものに適応できる概念になります。
たとえば、今この記事を読んでいる端末がPCならキーボードもUIです。自分の意図を画面に打ち込み、表現するための間にあります。コップで何かを飲むときも同じで、取っ手や口をつける部分は、飲み物と人間の間を媒介するインターフェースだと考えています。
モノ以外にも当てはまります。あるサービスに対して人が持つ印象や、伝わってくるイメージもインターフェースの一種です。
たとえば「フジロック」というワードを聞いて何を思い浮かべるか。「よくわからないイベント」なのか、「浮かれた人たちが集まるミーハーな場」なのか。そのイメージをつくっているのは、周りの人から聞いた話だったり、広告だったり、SNSで見た「フジロック行ったよ」という写真だったりします。
これらすべてが、その人の印象とその後の行動を決めるという意味で、僕の中では体験の一部だと捉えています。
こう考えると、デザインとは知覚できる形を決めるだけの仕事ではありません。 その先にある人の感情や行動まで責任を持ち、設計することです。
もちろん、いつもそこまでできる仕事ばかりではありませんが、意識してデザインに向き合うことで、「どういう形であるべきか」と同じぐらい「誰のどういう状態に向けた体験か」を自然と設計することになります。
つまりデザインは、形を決める前に、まず目的を発見したり定義することから始まります。
「何が課題なのか」「何を伝えたいのか」「人は今どういう状態に置かれているのか」を踏まえて、「こういうアプローチがいいのではないか」を模索する。
そこから、必要な形や伝え方を"体験"として組み立てていく。目的と人の間にある体験・感情・行動を設計することがデザインだと考えています。
もちろん、いつでもそんな仕事ができるわけではありません。ですが、そうデザインを捉え、実践しようと僕自身は試みてきたつもりです。
すぐにアウトプットを考えることから、デザインが始まることはあまり多くありません。「これを作ってください」「この要件でお願いします」と言われることはありますが、誰が何のために、どんな目的でそれをやるのかを理解しなければ、形を決めることや判断することができないからです。
理解した瞬間に「これだ」と分かるような選択肢の少ないシンプルな依頼であれば楽ですが、課題解決やユーザーや事業のことを考えると必ずしもそうではありません。
こういう時には探究から始まります。この探究には二種類あります。
2026年現在、AIの文脈では「デザインの探索」についてあまり語られていない部分だと感じています。”どう生成するか”のアウトプット論の割合が多い。
ですが、デザインにとって"探索"はかなり重要な要素です。 僕が好きなLinearの共同創業者 \*\*Karri Saarinen (元Airbnbのデザイナー)\*\*も、「コードですぐアウトプットが作れるからデザインは不要なのでは」という声に対して、こんなブログを書いています。
私たちの業界では、デザインはいまだによく誤解されています。新しいツールは、インターフェースをより速く生成したり、言葉をすぐにプロダクトへ反映させたり、デザインをそのままコードへ落とし込もうとし続けています。
そこにある前提は明らかです。「デザインとは、アウトプット(成果物)をつくる行為である」ということです。
―Output isn't design - Karri Saarinen(Linear共同創業者) https://linear.app/now/output-isn-t-design
クリストファー・アレグザンダーは、このことを最も的確に言語化した一人です。彼は『形の合成に関するノート(Notes on the Synthesis of Form)』の中で、デザインを「フォーム(形)とコンテキスト(文脈)のよい適合を探すプロセス」として描いています。
ここでいうコンテキストとは、単なる背景条件ではありません。 その問題をその問題たらしめている、あらゆる力の総体です。
人間のニーズ、技術的な制約、衝突する要件、習慣、例外ケース、一見すると見落としてしまいそうな関係性──それらすべてを丁寧に時間をかけて見ていく必要があります。
こうした力学が解消されずに残っているところに、悪いデザインが現れます。逆に、それらの「ミスフィット」が丹念に解きほぐされていったところに、良いデザインが立ち現れます。
Output isn’t design - Karri Saarinen Co-founder of Linear https://linear.app/now/output-isn-t-design
逆に、こうした文脈を無視して「もうこの形でいいよね」を積み重ねてしまうと、誰になぜこれを届けるべきなのか?が薄れ、事業としても機能しなくなる可能性は高まります。
難しい状況があればあるほど、現状を整理し、重要な要素を発見して方向性を形作る探索のフェーズが必要です。
Saarinen氏はブログの中で、自身が学んだこととして次のように書いています。
その過程で僕が学んだのは、「与えられた問題を、そのまま前提として受け取らない」ということです。何かをデザインしてほしいと依頼されたとき、まず最初にやるのは「これは本当に解決すべき問題なのか?」と疑うこと。「もしこれをやらなかったら、どうなる?」「誰がこの問題を定義した?」といった問いから始めます。
―Design is more than code - Karri Saarinen(Linear共同創業者) https://linear.app/now/design-is-more-than-code
どれだけかっこいいグラフィックを作るにしても、どれだけ人の課題を解決するにしても、その先には必ず「届けるべき人」がいます。その人や文脈を考えたうえで初めて、「かっこいい」という感情や「使いやすい」という配慮が生まれます。
そのためには、一発で答えを出そうとしないことが重要です。 形の探索、参考事例の探索、ユーザーの探索。これらの探索量とその質が、最終的なアウトプットの質をそのまま決めると言っても過言ではありません。
パッと思いついた一案をそのまま形にするのと、何十もの可能性を検討したうえで一案にたどり着くのとでは、同じ見た目になったとしても、その裏にある説得力がまったく違います。
AIによってある程度コンテキストを再現できる時代になってきましたが、AIをうまく使うためにも、この探索を通じて得たコンテキストが土台になります。
つまりアウトプットの質を高めるための土台づくりこそが探索であり、それはデザインの基本として、これからも変わらず存在し続けると考えています。
探索を重ねた結果、最初のアイデアが一番良かった、ということもあります。それでも、検討の過程で生まれた没案が、その案の説得力を裏付けてくれることもあります。そしてリリースしたあとも、探索は続いていきます。
そこで学んだことを、次のアウトプットや体験づくりに応用していく。この終わらない探索と制作のループを繰り返すことで、アウトプットの質そのものが少しずつ高まっていきます。ここをAIと一緒にやっていくことこそ、これからの時代に求められるクリエイティブなのだと考えています。
では、AIが登場したことでUIデザイン、UIUXデザインの現場では実際に何が起きているのでしょうか。私が観測している範囲でトピックにしてお伝えします。
日本国内のXでよく話題になるのは、UI生成の自動化です。各社がデザインシステムというコンテキストをAIに渡すことで、デザイナー以外の人もUIプロトタイプ、あるいはリリースできるレベルのものまで作れるようになっている。そういう動きをよく見かけます。
これだけ見ると、「デザイナーはもういらないのでは」と感じる人もいるでしょう。ですが正直なところ、この仕組みで終わるデザイン作業は「もともとデザイナーの中でも誰がやっても同じようになる範囲の問題だった」というだけの話だと思っています。
たしかにAIの進化によって、デザインの専門知識がなくてもアウトプットを出せる領域はどんどん広がっていきます。事業運営をする組織にとってもその方がやりやすい部分も多いでしょう。
ただ、それが広がるのに比例して、アウトプットや体験そのものが「誰でも作れる当たり前のもの」になっていく部分も同時に広がっていきます。
一方で、様々な制約や条件を探索したうえで感情や体験を設計するようなデザインは、時代や人、ツールが変わるにつれて内容やレベルは変化しても、対象が「人」である以上なくなることはないと考えます。むしろ複雑化していく一方です。
こうしたデザインスキルは変わらず必要とされ続けます。ただし、繰り返しになりますが、ただアウトプットを生成するだけのデザインの価値は、AI以前から徐々に下がっていたものであり、その傾向はこれからも続いていくと考えています。
「デザイナーでなくても60点のアウトプットが出せる」という話は、デザインに限った話ではありません。コードを書くことも、資料を作ることも、ビジネスを理解することも、AIと協業することで、職種を問わず"入り口の作業"は誰でもこなせるようになってきています。
だからこそ価値を持つのが、「T型人材」という考え方です。一つの分野で深い専門性を持ちながら、他分野にもしなやかに染み出し、その掛け算で価値を出せる人材。そうしたケーパビリティを持つ人が活躍するイメージが、今広く語られるようになっていると感じています。
### プロダクトマネジメント・エンジニアリングへの染み出し
もちろん、他職種の領域への染み出しというのも、選択肢としてあるだろう。特にシニアなプロダクトデザイナーとプロダクトマネージャーの仕事の境界線というのは、元来曖昧なもので、むしろそちらへの染み出しが自然に感じられる人も多いだろう。
定量分析や情報の構造化といった、デザインキャリアで身につけづらかった「能力」はもはやAIの「Skill」となりつつあるので、踏み出しやすくもなっている。エンジニアリングも言わずもがなである。
一方でデザイナーがデザイン領域で「判断」し、「旗を立て」ているように、プロダクトマネージャーやエンジニアもそれぞれの分野で、似たようなことを行っている。「越境」とはそれぞれの分野の倫理やルールに踏み込むことでもあり、異邦人(時には招かれざる客)として郷に入っては郷に従うことが必要になってくる。他者の専門性へのリスペクトを持つことが何より重要だ。
UX・ビジネス・エンジニアリングの境界に立ち、バランスを取りながらスムーズに仕事を進められる人はこれまで稀有な存在であった。その数は確実に増えていくだろうなと思う。
Takejune 株式会社スマートバンク Co-Founder/CXO https://x.com/takejune/status/2071412054246957397
バイブコーディングの普及によって、一人でSaaSサービスを作り、売り上げを立てる。そんな事例を耳にするようになりました。
国内では特にエンジニアバックグラウンドの人たちが作っている印象が強いですが、個人でサービスをリリースする話がSNSでよく話題になるようになっています。
これ自体は、個人的にはとても良い流れだと思っています。もちろん、みんながサービスを作らなければいけないわけではありませんが、それくらい自分の専門領域外のことも、AIと共同作業することで実現できるようになった。これは一つの事実です。
この流れは、AIモデルが発達するほど、AI活用が型として定着していくほど、事例とともにどんどん広がっていくはずです。
「自分が今までやってきたことを奪われるのでは」という見方もあります。ですが僕は、それ以上に「自分がやりたいこと、実現したいことに対してできることがどんどん増えている」と捉えるほうが、ポジティブだと思います。
それに土台のあるスキルがどこかにある方がAIをしっかり使い倒せますし、土台のスキルがないと、AIに代替されます。
"ユーザー・ビジネスに対して価値をつくる"をゴールにした考え方が徐々に広まる1つの動きだと感じています。
国内・シリコンバレー双方の情報を追っていると、デザイナーがFigmaのデータで作業を終えるのではなく、実際にリリースできるレベルのデータまで作る。あるいはコードを使って、本番相当のデータを扱えるプロトタイプを提案する。そんな事例が当たり前のように増えてきました。
Figma自体も、デザイナーが扱える素材の一つとして"コード"を位置づけ、2026年のConfigで「コードレイヤー」という機能を発表しています。
AIによって扱えるものが増えた結果、これまで知識がなかった人でも、デジタル領域に身近なコードを扱えるようになってきています。それにともなって、価値の探索や、より精度の高いアウトプットが求められるようになってきていると感じます。
これまでは「デザインデータ」という、実装の一歩手前のデータだけを作って終わりというケースが多くありました。ですが僕は、それは本来ベストな状態ではなかったと捉えるべきだと思っています。
デジタル上で良い体験を作ると言いながら、実際にユーザーが触れる場面まで想像できない、触れられない”完成品"で止まっていたデザイナーも少なくなかったはずです。覚えることが増えて大変な流れではありますが、この変化は前向きに受け入れていくべきだと考えています。
デザイン人材として求められるスキルや在り方はこれまでの\*\*"分業時代"で築かれたものではなく、より本質的な価値を軸に、再構築\*\*されてきています。
AI時代に必要なデザイン人材のあり方を書いていってみたいと思います。
誰でもアウトプットを作れるようになり、自然言語からもアウトプットが生まれる時代になりました。
その結果、「どの方向性に進むべきか・それはなぜか・だからコレで行くべきだ」という責任を、デザインの専門家が持てるかどうかは、分かれ道だと考えます。
様々な人がデザインの領域に入り込めるようになったからこそ、逆に"デザイナー"という席そのものが与えられなくなる場面も増えていくと考えています。
そんな中で、デザインのスペシャリストとして大切なのは、しっかりと"デザイン観点で構築した”ビジョンを持ち、それを提示し、事業やチームの目的と合致させ、ポジティブな議論や提案をしていくことです。
これは戦略のような抽象論だけではありません。Webサービスであれば実際のUIの表現や体験、コミュニケーションといった具体も踏まえ、抽象と具体を行き来しながらビジョンを組織や事業に提案できることが求められます。
Config2026のCatt Smallさんのセッション (https://youtu.be/WGZ38oeoBtU?si=pDusUNYVXjcZo40t)では、AIを使う中で見えてきた弱い部分と、そこにデザインがまだ介入できる問題解決の視点について語られる場面がありました。

体験やユーザーの感情に責任を持つ人が必ずしも「デザイナー」と呼ばれるべきとは思いません。。組織や個人のスキルによるので、一概な定義は必要ないです。
ですが、「作るだけ」を求められる席がどんどん外されていく中で、デザインを志す人材としては、常にこのビジョンを提示する側であろうとすること。それが、これからより強く求められる資質になると考えています。

「UIを作る」ことは手段でしかありません。ユーザーのなりたい状態をデザインするために、「体験を作り」、「ユーザーの感情をポジティブに動かす」ことをゴールに置く。これを基本として、デザインを実行することが大切です。
課題解決につながるのも、この視点があってこそです。UIだけを見ると「使いやすい/使いづらい」という操作性だけに閉じてしまいがちですが、本来の使いやすさは、その人がどんな状況でなぜ使うのか?を考えているかで変化します。
また考える・Figmaで形にするだけではなくリリース後の結果にまで責任を持って事業やユーザーに貢献する責任も体験デザインには求められます。1人の責任ではないですが、職能の染み出しやデザイン基準を上げることを考えると、結果まで向き合ってデザインできることは当たり前に求められてくると考えます。
Xを見ていると「AIでUIやデザインの生成を誰でもできる仕組みを作り、調整すること」自体をデザイナーの仕事と捉える人も見かけます。
これは今まで書いてきたデザインの定義とは少しばかり違うと考えています。が、1つの職能の活躍場所として広がっています。
デザインシステムの構築のAI時代版のようなイメージです。 社内でのAIワークフローの設計や振る舞い方針を定め、誰でもデザイン生成を再現できるよう自動化を目指す仕事です。
国内では、ユビーさんが「踊り手/舞台装置」という言葉でこの構造を表現しています。
この3ヶ月ほど、社内で「AI時代の組織と人材の今後」を定義するプロジェクトを進めていて、その中で出てきたのが「踊り手と舞台装置」というキーワード。
―#15 デザインプロセスは死んだ?踊らにゃ損のAI組織論と、ホワイトカラー産業革命の話 / chihokotaro https://note.com/chihokotaro/n/n13e6e5ce8d3a
おそらく国内だとこの論調が分かりやすいし既に強く”デザイナーの仕事"として語られ始めているのですが、個人的に”これだけ”になるのはあまり好ましくないと思っています。
AIによって誰でも同じようなアウトプットを作れる時代だからこそ、サービス独自の「テイスト(世界観、がイメージしやすいかも)」を作れるかどうかが、重要なテーマとして挙げられていると感じています。
テイストとは、サービスや物体に宿るカルチャー的・思想的な概念のことです。見た目やグラフィックもその一部ですが、それは表面でしかありません。なぜそのアニメーションなのか、なぜそのメッセージなのか。サービスが信じる方向性や思想が色濃く反映されているほど、テイストは人に届きやすくなります。その思想は、方針や機能、UI、言葉遣いなど様々な場所に滲み出てきます。
機能などはそこまで変わらないけど、なぜこのサービスを使うのか?のメッセージを届け、共感され、ユーザーもサービスをつくる一員になるような、そんな”テイスト”を設計する重要性の高まりを感じます。
それでは最後に、個人としてどんなデザインが求められているのかをまとめます。BONOでは、この要素をトレーニングできる道具と場をつくっていくことを理想のゴールに進めていきます。
具体的には、次の6つを考えています。
スキルの話をすると、どうしても「How」の部分に注目が集まりがちです。 ですが、デザインを志して行きたいのであれば、デザインそのものとクリエイティビティを信じることが大切だと考えています。
この記事でも書いた通り、探索の対象は自分が置かれた状況によって変わります。ビジネスのことを考えなければいけない場面もあれば、ユーザーのことを考えなければいけない場面もある
ただ作るだけでなく、物事を吸収して、考えて、組み立てる力。それに掛け算して、人の感情や知覚に合ったものを生み出す力。AIでどれだけ模倣できても、できない部分は己のクリエイティビティが必要だと信じる価値観やビジョンは精神論ではなく重要です。なぜなら答えはないし変わっていくからです。
デザインのビジョンを広く、強く持つ、深めながら、自分の目の前のことから始めてみる。必要な1歩でだと考えています。
具体的には、「ユーザーのシナリオを描く」ことから始めるのがおすすめです。いきなりUIを考えるのではなく、まず「ユーザーがどんな行動を取ると目的が達成できるか」というシナリオを描き、それをUIで体験にする一連のデザインフローです。
こうすることで、制作したUIの良し悪しを自分でも判断でき、デザインの結果に向かう試行錯誤が始まります。
もう1つ欠かせないのがプロトタイピングです。一度作って終わりにせず、パターンを試し、方向性を詰めていく。この反復を回せるようになると、UIの操作性だけでなく、「その人がどんな状況で何を考えているか」まで踏まえた体験をデザインできるようになります。
AI活用は、もう避けて通れないものになっています。一度やったことや、誰がやっても同じ結果になる作業をどう仕組み化していくか。そうした「AIの使い方のリテラシー」を上げていく必要があります。
それに加えて、コードを扱ってウェブ上の体験を作るスキルにも、真剣に向き合う必要があります。技術を土台にする仕事である以上、その根幹にあるコードを扱えることは大きな意味を持ちます。しかも今は、AIによってコードがかなり簡単に扱えるようになっています。ここに苦手意識を持ったまま進むのは、正直、時代に合っていません。逆に言えば、コードを扱えることで、自分が考えた体験の価値を伝えたり、高めたり、仕組み化したりできるようになる。AIが出てきた今、手を出さない理由のほうが少ないと思っています。
体験を作るうえで、コードや技術という変数は避けて通れません。ビジネスやチームの目標と一緒に、技術的な要素も踏まえて議論しながら体験価値をデザインしていく。それが当たり前になってきています。
もちろん、すべてのコードを自分の手で書ける必要はありません。ですが、データベースの仕組みや画面が作られる仕組み、デザインシステムの管理の仕組みといった大枠だけでも、AIと一緒に一度サービスを自分で作ってみる。考えたものが実際にURLになり、他の人が使える状態にリリースする。
これは今の時代、かなり大きな武器になりますし、大切な当たり前の感覚になると考えています。
考えるだけでなく、実際に結果にさらされる経験をどれだけ積めているか。これが、顧客理解や事業感覚をリアルなものとして持ち続けられるかを左右します。
サービスをリリースするうえでは、ユーザーの課題が本当にどこにあるのかをインタビューなどで発見することが出発点になります。ですがそれだけでは足りません。
実際にユーザーが動いたという数値を、リリースやテスト利用を通じて計測しながらデザインを設計する。この経験の有無が、大きな差を生みます。
考えて形にしたものが、しっかりユーザーの行動に達したのか?を顧客理解と数値指標を使って、リアルに向き合い能力値を深めていく。AIでできることが増えたからこそ、結果と向き合うことを前提にしていくことが当たり前になるべきと考えます。
AIが生成したものを正しく評価するために、自分の手で作った「クラフト」の経験が欠かせません。
それだけでなく、ユーザーの感情に訴え、共感して動かすための表現や体験が誰でもそれらしいことが生成できる時代の差別化になります。
もちろん、誰かが作ったデザインシステムでAIに生成させるだけの役割なら、クラフトのスキルはそこまで必要ないかもしれません。ですが、細部にまで生きとどく「見る目」が人の感情を動かす体験の構築に繋がると考えています。
AIの時代でも、AIを使わず自分の目で参考を盗み、手で形にして鍛えられたスキルは確実に生きてくるでしょう。初心者もこれは避けては通れないことです
最後に、大事なソフトスキルとして探求心、自主性、提案力の3つを挙げて終わります。
AIによって「普通のこと」はどんどん自動化されていきます。そして興味のあることはすぐに調べることもできます。
つまり、探求心と自主性があればすぐに調べて実行に移してそこから深めていくことが容易になっているんです。成長スピードに大きな差が生まれる時代になっています。
だからこそ、前のめりに首を突っ込み、自分でどんどん試していく人ほど、その分だけぐんぐん力をつけていきます。逆に「やったほうがいいから」や「正解」が出揃ってからでしか動けないと実行からの経験値を獲得することが難しいです。
大事なのは、興味を深掘りすること。どんどん吸収してどんどん実行していくこと。より深掘りたいと思える分野について突っ走ることだと考えています。
あとは「やるかやらないか」「そこに時間とお金を使うか」という意思決定だけが、人によって差が生まれる部分になっています。
そしてその結果を誰かにシェアしたり、提案したりして、自分だけの世界を他人とつなげ、コラボレーションしていく力も欠かせません。一人ではいいものは作れないからこそ、伝える力、巻き込む力が今まで以上に必要になると考えています。
デザインとは何か、AIによって何が変わり、何が変わらないのか。ここまで書いてきたのは、その定点観測です。
デザインが人に対しての行為である以上なくなることはありません。むしろAIによって、その仕事はより多くの人に開かれ、同時により深い探索と判断力を求められるようになっていくでしょう。
BONOは、この前提に立って進んでいきます。デザインを「作ること」だけでなく「人を動かす体験をつくること」として捉え、実践できる場づくりを進めて行きます。
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